
建設業許可でまず確認されるのが、経営業務の管理責任者の設置です。一般に「経管」と呼ばれますが、単なる名義上の代表者では足りません。建設業としての経営を実際に担ってきた人かどうかが見られます。
経管になる人は、法人であれば常勤役員、個人事業であれば事業主や支配人など、経営業務を総合的に管理してきた立場にあることが必要です。現場監督とは別で、「会社として工事を請け、契約し、資金を回し、事業を継続する」責任を負う立場にあったかどうか、という視点です。
経管の役割は、日常的な経理作業ではありません。建設業の経営に関する重要事項、たとえば工事の受注方針、資金繰り、対外契約、組織管理などを判断する立場にあることが前提になります。東京都の審査でも、この“経営に関与していた実態”があるかどうかを確認します。
では、どういう人が経管として認められるのか。基本は、建設業に関して一定期間以上の経営経験があることです。代表取締役としての経験、取締役として経営業務を補佐した経験、個人事業主としての経営経験などが典型例です。ただし、単に役員登記があるというだけでは足りません。建設業としての経営経験であること、そしてその期間が裏付け資料で確認できることが必要になります。
東京都の手引に基づく審査では、主に次の資料で確認されます
・登記事項証明書(役員在任期間の確認)
・過去の建設業許可通知書
・工事請負契約書、注文書、請書
・決算書、確定申告書
・履歴事項全部証明書(法人の沿革確認)
・在籍を証明する資料
会社を退任している場合や、廃業した会社での経験を使う場合は、当時の契約書や決算書が残っているかが重要になります。「経験はあるけれど証明資料がない」というケースが、実務では一番多いです。
また、経管は常勤であることも要件です。他社の常勤役員を兼ねている場合や、実態として営業所に関与していないと判断される場合は認められません。健康保険の加入状況、住民票の所在地、勤務実態なども確認対象になります。
経営業務の管理責任者の経験証明は、「何年やっていたか」だけでは足りません。どの立場で、どのような形で建設業の経営に関与していたのかを、資料で確認します。経験の内容によって、組み立て方が変わります。
まず、許可業者で役員をしていた場合です。この場合は比較的整理しやすく、当時の建設業許可通知書と登記事項証明書で役員在任期間を確認します。ただし、それだけで足りるとは限りません。許可業者であっても、在任期間と許可期間がずれていないか、建設業として継続して営業していたかを確認します。
次に、許可を持っていない法人での経験を使う場合です。このケースは実務上いちばん丁寧な整理が必要です。登記事項証明書で役員在任期間を確認したうえで、工事請負契約書、注文書・請書、請求書、決算書などを組み合わせて、その会社が建設業を営んでいた事実を裏付けます。決算書だけでは足りませんし、契約書だけでも足りません。事業内容と役員在任期間が重なっているかどうかがポイントになります。
個人事業主としての経験を使う場合も同様です。確定申告書や青色申告決算書で事業内容を確認し、あわせて工事契約書や注文書などで実際の工事実績を確認します。単に「建設業」と記載があるだけでは弱く、具体的な工事内容が分かる資料があると整理しやすくなります。
いずれのパターンでも共通しているのは、経験年数の計算と、資料の期間が一致していることです。役員就任期間と契約書の日付がかみ合っていない、事業年度と経験年数がずれている、といった点は補正の対象になります。
なお、ここで挙げている資料は経営経験を裏付けるためのものであり、常勤性を確認する資料とは別に整理します。健康保険の加入状況や住民票などは、あくまで現在の常勤性を確認するためのものです。
経管の整理は、条文上はシンプルですが、実務では「どう証明するか」で難易度が変わります。経験があるかどうかよりも、それをどう資料で説明できるかが審査の分かれ目になります。
経営業務の管理責任者の制度改正や体制型の考え方については、別ページで詳しく解説しています
▶ 経管制度改正の詳細はこちら 令和5年(2023年)改正以降の経営業務管理責任者の考え方